■永代供養墓の基礎知識
永代供養墓とは永代供養墓とは、お寺がその「永続性」をもとに家や家族に代わって、一人ひとりの供養・弔いと管理をしつづけてくれるお墓です。もちろん、お墓参りは自由にできます。「永代供養」とは何をするのかというと、お寺が故人一人ひとりを記憶して、永代にわたって供養・弔いをしつづけることです。
▶永代供養墓のスタイルには、大きく二通りあります。
○一つ目は、最初から骨壷のお骨を取り出して、他の方のお骨と一緒に同じところ (合祀スペース)に合葬(埋骨)する合祀スタイルです。
○二つ目は、お骨安置スペースに骨壷などのままで安置するお骨安置スタイルです。ただし、七回忌、三十三回忌など一定の安置期間後、合祀スペースに合葬されるのが一般的です。なお、数は少ないですが、地方など土地に不自由しないお寺では、通常のお墓のように個別墓型の永代供養墓もあります。
▶「お寺ならでは」の永続性とは
高額な借金をかかえたなどでお寺の維持運営に行き詰まったお寺、過疎地で檀家が大幅に減少し廃寺になったお寺、住職不在になったお寺があるのは事実です。
しかし、宗教法人であるお寺は民間企業と較べて経営破綻は大変少ないですし、住職が僧侶としての本業業務に徹している限り、お寺を支える役割の檀家が大幅に減少しない限りは、突然、経営破綻することは考えられません。つまり、お寺の永代供養墓ならば、お寺が続く限り、供養してもらえるということです。
廃寺になりそうな過疎地のお寺が永代供養墓を設けて募集することはないでしょうから、永代供養墓を考えるにあたって、むしろお寺の「永続性」が担保となっていると考えていいでしょう。ただし、永代供養墓選びは「お寺選び」であり、「住職選び」であることは頭に入れておいてください。
永代供養墓は、他の方と同じお墓に合祀されることから「合祀墓」「合同墓」「合葬墓」「共同墓」「集合墓」などとも呼ばれています。また、個々のお寺によって、「久遠墓(くおんぼ)」「倶会一処墓(くえいっしょぼ)」「涅槃墓(ねはんぼ)」など、さまざまな名称がつけられています。
▶永代供養墓の主な特徴
一、お墓を守る人、お参りする人がいなくなっても、家や家族に代わってお寺の「永続性」をもって供養と管理をしてくれる
二、最初に一式料金を納めれば、年間管理費やお布施などの費用がかからない
三、お寺の敷地内に設けたお墓で、一体(一霊・お一人)いくらという料金設定なので、一般のお墓と較べて安い
四、宗教・宗派は問わない
五、生前に申し込みができる
六、檀家になる必要がないので、行事への参加などお寺とのつきあいは強制されない (まれに檀家になることを条件としているお寺もある)などがげられます。
なかでも最大の特徴は、(後に金銭負担を残さないことを含めて)承継を前提としてない点にあります。「お墓を継いでくれる人がいない、いなくなる」という方だけでなく、「子供にお墓のことで面倒や負担をかけたくない」という方のニーズにも応えているのです。もちろん、お墓を建てることに費用面で不安な方にも大きなメリットがあります。
▶永代供養墓は、こんな人におすすめ
熊本県人吉市が平成25(2013)年から1年かけて行なった墓地の現況調査の結果、市内のお墓のうち4割超が、墓守が絶えたり引き取り手のないお墓だったということが公表されました。
墓守が絶えたり引き取り手のないお墓の全国的な調査は行なわれていませんが、この調査結果から見ても、お墓の承継が大きな社会問題になりつつあることがわかります。そのようなことから最近、マスコミにおいては「墓じまい」という言葉がキーワードになっています。墓じまいをするということは、必ずお墓 (お骨)を改葬しなければなりません。その改葬先としては永代供養墓が最適なのです。
永代供養墓はあらゆる人のニーズに応えることができます。なかでも永代供養墓を考えたほうがいいと思われるのは、以下のような方々です。
◎お墓を継ぐ人(お墓参りしてくれる人)がいない・子供がいない・子供が嫁いだ・身寄りが遠くにいる ◎自分の死後にお墓のことで 子供など残された家族に負 担をかけたくない ◎身寄り、縁者はいるが、頼りたくない、子、頼めない自分ひとりだけのお墓を求めている
◎お墓にあまりお金をかけたくない、かけられない
◎ほかに引き取り手がない縁者のお骨をかかえて因っている
◎人に迷惑をかけないように生前に自分の納骨先を考えておきたい
◎生前に死後の心配を解消して、残りの人生を謳歌したい
◎先祖代々のお墓を守るのが金銭的負担になって因っている
◎お寺に先祖代々のお墓があるが、檀家であることが負担になっている
◎お寺の檀家にはなりたくない
◎お寺とのつきあいはこりごり。檀家をやめたい、寺離れしたい
◎お墓が遠くにあり、なかなかお墓参りに行けない
◎遠方へのお墓参りが身体的・精神的に負担になっている
◎いまのお寺の住職、あるいは新たな住職とはうまくやっていけない。寺替えをしたい
◎故郷や遠方にあるお墓を近くに移したい
◎宗教・宗派にこだわりたくない
◎伝統的なお墓の制度にこだわらない、こだわりたくない
いずれにしても、すべての現代人がお墓のことを考えるとき、永代供養墓は注目のお墓といえるでしょう。永代供養墓のスタイルと納骨方法永代供養墓の造りや納骨方法にはさまざまな形式があります。
■選ぶなら、やはりお寺の永代供養墓を
民営墓地(霊園)においても永代供養墓の案内を目にしますが、どうでしょう。お寺が運営・管理していない霊園で、永続性をもって供養・弔いができるのでしょうか。
相談者からはよく、「年に1、2回合同法要があるから供養は心配ないと言われた」と聞くこともあります。しかし、合同法要は行事であって、通常の供養(おつとめ)とは違います。私は、民営墓地の永代供養墓は、「永代供養のない合葬墓」としてとらえるべきと考えています。
あるいは、信頼性の面から公営の合葬墓を永代供養墓として考え、検討する方がいますが、やはり永代供養をしているとはいえません。ただ単に納骨・埋葬されればいいというのであれば別ですが、きちんとした供養・弔いがなされる永代供養墓を求めるのであれば、お寺の永代供養墓を選ぶべきと、私は相談者には進言しています。
▶永代供養墓のスタイルと納骨方法
永代供養墓の造りや納骨方法にはさまざまな形式があります。ただし、基本的構造は変わりません。上図のように、お墓の地面から上の部分にお骨を安置するスペース、地面から下の部分にお骨を合祀するスペースがあります。そしてその前に、お参りするときに手を合わせる参拝スペースが設けられ、仏像などをまつり、花立てや焼香用香炉が置かれています。
永代供養墓に納骨・埋葬された故人名(本名あるいは戒名など)の刻字方法は、以下のとおりです。①墓誌に刻字する、②石板やアクリル・金属板のプレートに刻字したものを並べて貼る、③墓籍簿や過去帳、法名軸に記載し管理者が管理する、このうちいずれかになります。
ほとんどが、①の墓誌に刻字、あるいは②の刻字したプレートを貼る方法です。 永代供養墓の納骨方法は、以下の三つの方法が一般的です。
一、最初から骨壷のお骨を取り出して合祀スペースに納める (土に還す)
二、納骨スペース(納骨棚)に骨壷などのままお骨を安置し、一定の安置期間後、合祀するかたちが多い
三、お骨の一部を分骨して一定期間あるいは永代に安置し、残りのお骨は最初から合祀する
<註: 位牌の一部に分骨したものを収納するお寺もある。曹洞宗正源寺(牛久市内)>