年金・介護・医療、負担増を議論 

■年金・介護・医療、負担増を議論 社会保障改革、政権が会議新設へ

▶︎政権が描く社会保障改革の日程/主な検討項目

 安倍政権が社会保障改革に関する会議の新設を検討している。政権は参院選への影響を考慮し、国民負担を伴う社会保障改革の議論を先送りしてきた。しかし、2025年以降は人口の多い「団塊の世代」が全員、75歳以上の後期高齢者になる。年金や介護、医療の費用が急増する見通しで、国民の負担増が会議の焦点になる。

 安倍晋三首相は2日の政府与党連絡会議で来週、内閣改造を行う方針を表明した。今回の改造では社会保障改革の担当閣僚を改めて任命し、改造後の今月中下旬にも会議を設けるとみられる。会議をめぐっては、公明党の石田祝稔政調会長も8月29日、菅義偉官房長官と面会した際、「社会保障について全体的な会議を作るべきだ」と提言していた。

 官邸関係者によると、会議は有識者や関係閣僚で構成するという。議長は首相が務めるとみられる事務局は内閣官房か内閣府に置く方向で検討が進んでいる。官邸幹部は今回の社会保障改革について「首相にとっては長期政権の中で、総仕上げ的なものになるだろう」と語った。

 社会保障改革の議論を本格化させる背景には膨らみ続ける社会保障給付費がある。政府見通しによると、18年度に約121兆円だった社会保障給付費は、団塊の世代が全員75歳以上となる25年度には約140兆円、65歳以上人口がピークとなる40年度には約190兆円に膨らむ。それだけに財政圧迫の最大の要因となる社会保障給付費の抑制は喫緊の課題になる。

 新たに設けられる会議の議論は当面は年金制度と介護保険制度の改革が焦点になる。政府は来年の通常国会に改革関連法案を提出する予定で、会議ではそれに向けた改革の方向性を示すとみられる。

 公的年金制度は先月発表された財政検証の結果を踏まえ、高齢者らの就労を促し「支え手」を増やす改革に重点が置かれる見通しだ。想定される主な改革項目には、厚生年金のパートらへの適用拡大や、働いていて比較的収入が多い高齢者の厚生年金をカットする在職老齢年金制度」の縮小・廃止などが挙がる。老後に向けた資産形成を促すため、私的年金「確定拠出年金」の加入拡大を図る見直しも行う。

 介護保険制度の議論では、介護サービス利用者の負担増に踏み切るのかが大きな課題だ。介護サービス利用時の自己負担(原則1割)について2、3割負担の対象者の拡大、在宅サービスの利用計画「ケアプラン」の作成費用への自己負担導入などを検討する。

 医療保険制度は来年夏の「骨太の方針2020」への改革案の明記に向け、議論が進む見通しだ。75歳以上の窓口負担(原則1割)の引き上げや、公的医療保険を適用する薬剤の範囲の見直しなどがテーマになる。

 ただ、新たな財源が確保されない中では、利用者の負担増につながるため、意見集約の難航は必至だ。(及川綾子、山本恭介)