関東平野南部における活断層と地震活動の最近の記事

 プレートの運動が主な原動力となって地殻中にひずみが蓄積され,それが限度を超えると断層が生じて地震が発生します.断層による岩盤や地層のずれが地表に達すると,特有な断層地形が出現します.台地や扇状地など平坦であるはずの面上に連続的な崖がある,山の尾根の先端が切られたような状態で直線的に連なる,というのがその代表的な地形です(22).

 断層は岩盤・地層中の弱い箇所であって,ひずみの再蓄積により繰り返しずれを起こして地震を発生させます.このずれがつくられて数十万年もたっていない新しい地形や地層で生じていると,断層活動が現在も継続していると判断され,活断層と呼ばれます.震源が深くて断層のずれが地表にまで達しない場合には,活動的な断層が存在することを地形から知ることは不可能で,地下の地質構造を人工地震波などで探査して推定するということになります.

関東平野の地下では頻繁にかなり大きな地震が発生しています.すなわち,活(動中の)断層が非常に多数存在しています.しかし深いところで起こっているので,断層ずれが地表までは達しないので活断層として把握されません.関東平野の地下には南からフィリピン海プレートが潜り込み,その上面付近で大きな地震が起こっています.その深さは50?70kmです.地震の規模(M)は最大で7.0程度ですが,この規模の地震では断層の長さが30kmほどなので,地表にまでは届きません.また,平野中央部では軟らかい地層が厚いので,断層は地割れ群となって地表近くでは消失してしまうことが考えられます.このため平野内に活断層はほぼありません(図23).

図の75km圏内には3本の伏在断層があるとされていますが,これらの推定根拠はあまり確かなものではありません.伏在断層は地上からの探査をとくに詳細に行ってその存在を推定したものです.?の荒川断層はその存在がほぼ否定されています.?の東京湾北縁断層については,その陸上の連続する崖は明らかに海の侵食によるものです.?の立川断層は活断層であることが確実とランクづけされてはいますが,発掘(トレンチ)調査をしても断層による地層のずれは見出されていません.
  内陸にある活断層が活動して地震を起こすのは数千年?1万年に1回の頻度です.これまでに起こった内陸の地震で既存の活断層に関係づけられないものが半数あります.活断層がとくに多いのは中部内陸から近畿にかけての地域ですが,最近300年ぐらいの期間ではこの地域で地震がとくに多いという傾向はみられません.

1995年の兵庫県南部地震では,淡路島の野島断層が活動して地表に連続ずれを起こしたことで有名になりましたが,この野島断層付近の震度は6弱で,震度7域(全壊率30%以上)はこれから外れ,震源からかなり離れたところに出現しました(図24).断層山地の典型ともいえる六甲山地では地下で六甲断層系が活動したことが知られていますが,この断層付近の震度はやはり6弱で,震度7は地下地質構造を反映して六甲南麓に帯状に現れました.

活断層の活動による地震では震源が浅いので震度は大きくなりますが,断層に近いほど震動が強くなるわけではなく,地盤・地質構造がより大きく震動強さを決めます.地表の情報から活断層と認定できるのは,地下に多数ある活動的な断層の一部です.立地の局地的地盤条件は無視して,活断層があるかないかを詮索しすぎるのは(例えば原発),対応の基本から外れます.

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