土浦まちづくり市民の会

■あの時~これから:東日本大震災1年 

土浦・除染で市民と行政の協働模索 /茨城

毎日新聞 3月15日(木)12時34分配信

■「一人一人が向き合って」

 東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で比較的放射線量が高い土浦市で、市民と市が協力して放射線量を測ったり、除染する取り組みが始まった。市民団体が「行政単独の力で除染するのは困難」として2月、市民ボランティアの協力を得て町ぐるみの除染活動をするよう市に要望。中川清市長も3月の定例記者会見で「呼び掛けは大変ありがたい。市民の意見を大切にする」と、市民と行政の協働による除染に前向きの姿勢を示した。

 「線量を自分たちで測ってみて驚いた。行政が公表するレベルではない」。市民団体「土浦まちづくり市民の会」共同代表で元山形大教授(物理学)の長坂慎一郎さん(70)は語る。

長坂慎一郎

 同会は昨秋、放射線作業に従事した経験者、専門家を中心に「放射線測定グループ」(約10人)を発足。市内の個人宅約50軒や公園・通学路など16カ所の線量を測定したところ、個人宅の雨どい下から、国が除染の対象とする毎時0・23マイクロシーベルトを大幅に超す毎時7・55マイクロシーベルトを検出した。「まず自宅の線量を測ってほしい。身の回りの危険を知ってほしい」と長坂さんは言う。

 長坂さんは原発事故後、原発の仕組みや問題点について、県内各地で約10回講演。「若い母親が最も原発事故を心配している。自分で線量を測らず講演するのは良くない」と気付き、昨年8月、放射線量測定器を会で独自購入した。同時に市に対して市民への測定器貸し出しを要望。市も応える形で昨年10月17日から貸し出しを始め、現在市内8公民館で計16台を配備している。3月からは市民が生産した農作物の放射性物質検査も市役所内で開始した。

 一方、除染は同会が個人宅2軒で試行したところ、課題が見つかったという。長坂さんは「5センチ掘ったくらいでは除染しきれない場合がある。高齢者が25~30センチほど掘るには数時間かかるし、汚染した多量の土の処分の問題もある」と指摘し、市との協働の必要性を唱える。市民と市が協働したのは、PTAと一緒に行った除染だけ。市は「市民の安全面や事前準備の問題などで市役所内での整理が必要」と話す。ただ、中川市長の公約は「市民と行政の協働のまちづくり」であり、東日本大震災1年を機に除染についても協働の道を模索する構えだ。長坂さんは言う。

 「一人一人が線量や除染問題に向き合ってほしい。皆が理科などで学習してきた科学的な力を今発揮する時です」【福沢光一】