地盤改良費は土地売り主が負担するべき」か?
2010/10/21
「宅地」として売られている土地が、実際にはどのような地盤性状なのか。多くの場合、購入後に地盤調査をしてみるまでよくわからない。軟弱地盤であるこ とが判明すれば地盤改良工事などが必要になる。ただし、この費用は一般的に建て主負担になる。そんな"土地取引の慣習"がひっくり返った判決があった。 「地盤改良費用は土地の売り主が負担すべき」とした高裁判決だ。今年1月20日に名古屋高等裁判所が下し、その後確定した。この判決は今後、住宅業界にど んな影響をおよぼすのか。ケンプラッツ読者の意見を聞かせて欲しい。(池谷和浩=フリーライター)
この裁判は、注文住宅を建築するために愛知県のニュータウンの一角を購入したユーザーが、売り主である県住宅供給公社を提訴した事案だ。請求額は252万円で、ユーザーが土地購入後に木造2階建て住宅を建築した際、地盤改良のために支払った工事費だ。
問題となった宅地は切り土・盛り土で造成されており、着工前のスウェーデン式サウンディング調査で、盛り土部分のかなりの範囲に軟弱層が確認された。建 築を請け負った住宅会社は地盤改良が必要だと判断し、ユーザーは湿式柱状改良工法を選択した。その後、住宅が完成したユーザーは公社を訴えた。軟弱な地盤 であることを知らされずに土地を買わされ、地盤改良を強いられた、というのだ。
一審でユーザーは「売り主には軟弱地盤について説明義務、瑕疵担保責任があった」と主張。それに対し公社は「販売時のパンフレットには『造成地のため地盤調査後、地盤改良が必要になる場合があります』と記している」と反論した。一審は公社の主張を採用して請求を退けた。
だが二審は一審判断を取り消し、ユーザーに軍配を挙げた。「買い主が本件記載(パンフレットの注意事項)を読み聞かされたか、あるいは本件記載に気づか なかったかどうかは必ずしも重要な事情ではない。というのは、本件記載の内容があいまいだからである」(二審判決文より)というのだ。
高裁と地裁での両者の主張(取材を基に日経ホームビルダーが作成)
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