地震の多い、あいまいな日本の中のつくばと私

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地震の多い、あいまいな日本の中のつくばと私

平野 聡
0) はじめに
 日本は地震が多く、いつどこで大地震が起きても不思議ではないと言われています。また、活断層は日本中にあり、誰もが活断層の上で生活しているのだという雑誌記事もありました。筑波の地はどうなのか?? 地震に強いのか? あるいは、危ないのか?先日、工技院の地質調査所でつくばの地質を研究している専門家から話を聞く機会がありました。 それを元にこの報告を行うことにします。 もちろん、ここに述べるのは私の理解で、聞いた通りではありません。不正確な記述があったら私の理解不足です。指摘して下さい。これを読んで興味を持った人は、工技院の地質調査所の「地質標本館」(入場無料)に行ってみるとよいと思います。学園都市のボーリングで出てきた地層のサンプルや、この辺が海だった頃の貝の化石の層などもあって楽しめます。 1) 台地の位置つくば市と筑波研究学園都市は「筑波稲敷台地」という台地の上にあります。この台地は筑波山の南に広がっていて、東は土浦市や新治村との境界になる桜川、西は小貝川、南は霞ヶ浦に囲まれています。 筑波山 鬼 小 台 桜 怒 貝 地 川 川 川 霞ヶ浦
2) 晴れた日には
 筑波山が見える地図を見るとよく分かりますが、筑波山は福島県の阿武隈山地から続く山波の南の端にあります。この阿武隈山地は日本でも地震が少ないところのひとつです。硬い地盤で地質が安定しているからです。 筑波山も花崗岩などの硬い岩盤でできています。筑波山の麓には石屋がたくさんありますね。この花崗岩の硬い岩盤は筑波稲敷台地の下にもぐり込んで、台地の下に横たわっています。どのくらい深くのことろにもぐり込んでいるかというと、大穂のあたりで350メートルくらい、学園の中心部で600メートルくらいの深さだと推定されています。筑波稲敷台地はこの安定した地盤の上に乗っています。
3) 地層の表層学園都市の建設にあたって、
 たくさんのボーリング調査が行われました。高層の建築物は杭を支持層(硬い地層)まで打ち込んで基礎にしなければならないからです。
 1988年までに約500本のボーリング調査が行われたそうです。地質調査所は地質図の精度を高めるために、建築用のボーリングから得られたサンプルだけではなく、独自のボーリング調査も行いました。関東平野はご存知のように富士山の噴火で降った灰がつもった関東ローム層で覆われています。東京のでは関東ローム層の厚さは数百メートルもあります。この辺では2メートルくらいの厚さしかありません。
  この層は2万年前から5万年前にかけて積もりました。その下の地層は、古代の鬼怒川(古鬼怒川)が流れて作った砂と泥の地層です。 この層は厚さが5メートルくらいあって、常総層と呼ばれています。6万年から12万年前にできました。(ちなみに、数万年前というと旧石器時代ですが、日本にも旧石器時代人はいました。)砂の層と泥の層は深さの方向だけでなく、水平方向にも交互に広がっています。 例えば、台地を深さ5メートルのところで切って見ると、マーブルケーキの断面のように砂が多い所と泥が多い所とが重なりあって縞模様になっています。
 ですから、10メートル離れた隣の建物でも、地面の下の様子は違ってきます。筑波大のあたりから学園の中心部にかけて古代の谷がありました。その谷の上に立つ建物は支持層になる固い層まで深めの杭を打つ必要がありました。他にもところどころに谷の痕がありますが、総じて局所的なものです。谷の深さは所によって違いますが、たとえば30メートルくらいです。今は土で覆われています。
4) 盛り上がっているのは山、
 沈んでいるのは海常総層の下は海でした。その下は陸でした。その下は海でした。台地はずっと海と陸を交互に繰り返したようです。海だった時も深さはそれほどでもないので、海の時にできた層には泥の中に海の貝の化石がたくさん含まれています。これは地質標本館で見ることができます。びっくりするほどたくさんの、しかも15センチもある大きな貝がびっしり含まれています。氷河期の層からは、標高1500メートルの冷涼な気候に相当するくらい低い気温で育つ貝の化石が見つかっています。
5) 活断層の上で寝るの常総層も
 その下の層も、陸になってから年月が経っているので水は抜けており、硬くなっています。台地の上では地盤が広域に渡って液状化するようなことはありません。(ただし、人工的に盛り土をしたような所はあり得ます。)大いに気になるところの「活断層」も見つかっていません。神戸の地震は活断層が動いたことによって起きた震源の浅い直下型地震でした。つくばにはそういう活断層はないので、震源の浅い直下型地震は起きそうもありません。近くにある断層というと、鬼怒川のあたりには大きな断層があります。ここは、上で述べた筑波山の固い岩盤が関東平野の真中方向に向かって急激に落ち込んでいる(もぐり込んでいる)ところです。この辺から急激に落ち込んで、一気に3000メートルくらいまでもぐります。この辺は地質が不安定なので地震が起きることがあります。
6) プレートテクトニクス理論と
 茨城県民地面というのはマグマの上に浮いている浮き島です。浮き島はプレートと呼ばれ、いつも移動しています。大きく日本列島を見ると、日本の南側から動いてくるフィリピンプレートと、東から動いてくる太平洋プレートが、日本列島を載せているユーラシアプレート(アメリカンプレート?)の下にもぐり込んでいる構造をしています。このプレートがズるっと動くと地震が起きるわけですが、あいにく、フィリピンプレートと太平洋プレートがぶつかっているのが、つくばの下あたりです。
  1921年には土浦地震という大きな地震があって被害が出ました。竜ヶ崎地震というのもありました。プレートはなにしろ大きいので、本当の所は、つくばの真下というより、「茨城県南部もプレートがぶつかっているところの一部」といった方が正確です。ですから、茨城県南部を震源とする地震は大小たくさん起きています。
  特徴的なのは、震源が深いことで、30Km とか50Kmくらいのところを中心にして分布しています。これくらい深いと、地震の波が伝わってくるうちにエネルギーが分散するので、マグニチュードの割に震度は小さくなります。(東京、つくば間は50Km)恐いのは海溝型(?)の巨大地震です。 関東大震災の時には横浜方面が震源だったわけですが、この辺も震度6という強烈な揺れに襲われました。水平面にそって地震波が伝わる場合、波の伝わり方は共振などもあって一様ではありません。震源は遠くても強い揺れになることがあります。次の関東大震災の時にはこの辺も相当な揺れになる可能性が高いです。
7) あいまいなまとめ以上をまとめるとこうなります。
* つくばの地質は地震に対しては良好である。首都圏では最善。
* 活断層による浅い震源の地震はない。
* 震源の深い地震はよく起きている。
* 関東大震災のときは強く揺れるであろう。

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