医療

■東京女子医大事件

東京女子医大事件(とうきょうじょしいだいじけん)とは、2001年3月及び2014年2月に東京女子医科大学病院において発生した医療事故と隠蔽事件。

2001年3月2日、患者の心臓手術中に人工心肺装置の事故が起こり、患者は2日後の3月4日に死亡。

その後、術中大静脈から人工心肺に血液がうまく抜き取れない異常が発生し、脱血不良で患者に脳障害が生じたとする告発文書が遺族に届いたため、遺族が病院に調査を申し出た。その後、大学側が発表した内部報告書では、「助手が吸引ポンプの回転を上昇させたことが原因である」という記載[注 1]がされていたために、警察が捜査を開始した。

2002年6月28日、人工心肺装置の操作を担当した助手が業務上過失致死容疑で逮捕され、同時に患者のカルテを改竄[注 2]したとして講師が証拠隠滅容疑で逮捕された。この事件を受け、同年7月に厚生労働省は、大学病院の特定機能病院の承認を取り消した。

2004年3月、東京地裁判決で講師は有罪(懲役1年・執行猶予3年)が確定し、2005年2月には医業停止1年6カ月の行政処分を受けた。一方、助手は人工心肺装置の操作に過失がなく、人工心肺装置自体に瑕疵があったものとされ一審・二審ともに無罪となり、検察側が上告を断念しため判決が確定した。人工心肺装置には薬事法の適応外のフィルターが必要もない箇所に設置されており、このフィルターが閉塞したことが事故原因で、このことを予見できたものは誰もいなかったという主旨の判決要旨であった。

2006年11月、厚生労働省は大学病院に対して6ヶ月間の戒告、元講師に対して保険医登録取り消しの処分をそれぞれ下した。

安全管理体制の改善および患者や家族の理解が得られたとの判断により、大学病院は2007年8月に特定機能病院として再承認された。

2014年[ソースを編集]

2014年2月、頸部リンパ管腫の摘出手術を受けた男児が、3日後の2月21日に急性循環不全で死亡した。術後投与されたプロポフォールが原因だった可能性があり、東京都は病院への立ち入り調査を実施、警視庁は業務上過失致死容疑で捜査し、証言により、成人用量あたりのOD(過量)での使用が確定した。全身麻酔剤であり人工呼吸器を使う際の鎮静剤としても使用されるが、過量においては呼吸や心拍が著しく低下する恐れもありまた中毒になった際の解毒剤がなくレスキュー手段がないため、特にメーカー添付文書では集中治療中の小児への投与を禁忌と明記している、また、投与に対する事前説明はなく必要とされる家族同意書も得られていなかったが、捜査により男児には成人用量の2.7倍もの過量で投与されていたことが判明した[1][2]。また、同大医学部の非公式会見(大学側のトップの承認によるものではなく、むしろ内部対立が背景[3])および捜査結果からは、過去5年間にわたり、14歳未満の55人に63回ほど投与しており過量投与も常態化していたと発表された[4][5]。さらには同医大理事長の会見により、詳しい死因は不明ながら、同様の小児投与事例のうち12人が最短で数日後、最長3年以内に死亡していたことも公表された[6]

なお、よく報道でも混同されているが、法律上でこうした使用が禁止されているわけではなく、あくまでメーカー側と臨床現場の共同での世界各国統計調査により死亡例報告が相次いだ使用ケースにおいては、説明書において使用禁忌が明記されているに留まるのが現状である。同医大においても医師判断で使えるものではなく、個別症例により他薬では代用が効かない際に学内倫理委に審査に出して承認される必要があり、家族同意書も必須である[6]

2015年2月6日、第三者による事故調査委員会は報告書をまとめ、病院側の過失を認定した[7]。病院側は、安全対策について改善を実施している[8]

この事故により、厚生労働省は特定機能病院の取り消しを含めた処分を検討している[9]。2015年4月14日、厚生労働省社会保障審議会 (医療分科会)[10]において、特定機能病院の取り消しに相当する意見書をまとめることが決まった[11][12]

日本私立学校振興・共済事業団は大学への補助金を4億円減額する[13]

その後同病院が、脳腫瘍の再発の疑いで入院していた当時43歳の女性に対し、痙攣の発作を抑制するため、抗てんかん薬の一種である『ラミクタール』を処方されたが、その結果、中毒性表皮壊死を発症した上、肺出血などを併発し死亡していたことが、2016年7月24日付の毎日新聞の報道で判明。第三者機関の調査で、ラミクタールを添付文書に記載されている使用量の16倍に当たる過度な処方を実施していたことが指摘されているが、病院側は「適切な処方だった」として過失を否定している[14]