耐熱塗料

■ロケットにおける断熱材技術の建築分野への実用

▶︎宇宙航空研究開発機構

 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、研究開発の結果生まれた特許等の知的財産の民間移転を促進すべく活動していますが、今般、その具体的な成果活用として、「ロケットにおける断熱材技術」を、株式会社日進産業(東京都板橋区 代表取締役 石子 達次郎)に実施許諾し、その技術を用いた製品が開発・販売されることになりました。

 JAXAでは、H-IIロケットの開発に際して、打上げ時の熱から機体及び人工衛星を守るためにロケット先端部(フェアリング)に塗布する断熱材技術を開発いたしました。この断熱材技術は、軽量で熱制御性に優れ、かつ優れた施工性を有しています。

 この技術を応用して、株式会社日進産業では幅広い温度帯に対応できる高性能塗布式断熱材「GAINAシリーズ」を開発し販売することになりました。
株式会社日進産業は約10年前から建築業界を中心に塗布式断熱材「シスタコート」を販売しており、地球温暖化の切り札として各業界から注目を集めていますが、使用温度帯に限界がありました。今回開発するに至った、JAXA技術を利用した高性能塗布式断熱材は、-100℃~+600℃までの幅広い温度帯に対応できるもので、このうち、-100℃~+150℃までの温度帯に対応できるものについては、近日中に販売が開始されます。
「GAINAシリーズ」は、建築、車両、設備、部品等あらゆる産業ニーズに応えることが期待される製品です。

 ■補足参照

▶︎JAXAの断熱材技術の概要

概要  H-IIロケットの衛星フェアリング開発の過程で生まれた技術

シリコン系とエポキシ系の二種類があり、主な成分はマイクロバルーンとシリコン又はエポキシ樹脂

「国際新技術フェア2002」において、「第2回優秀新技術賞/優秀新技術特別賞」を受賞

▶︎ 特徴

施工性:スプレー塗装可能。常温で硬化

接着性(他の接着剤の併用不要)

軽量(密度 0.3~0.35(g/cm3))

耐熱温度(エポキシ系 約300℃  シリコン系 約500℃)

断熱性(低熱伝導率 80℃ 0.05~0.107w/(m・k))

高温での機械特性(熱衝撃、衝撃加重、振動加重に強い)

○ JAXAでの適用例
本断熱材は、JAXAが開発した大型ロケットH-II、H-IIAロケットのフェアリング(打上げ時の風圧、熱等に対して衛星を保護する役目をする直胴部を含む円錐状のカバー)の断熱材として使用しています。

○株式会社日進産業の会社概要

代表者  :石子 達次郎
所在地  :東京都板橋区坂下2-15-7
創業   :昭和52年4月
業務内容 :機械工事、設計、開発(昇降機、物流機器等)、断熱事業
売上高  :6億円(16年度実績)
これまでの実績:
産業分野(公的設備・鉄道・通信・倉庫・工場等)、般建築分野、リフォーム分野(屋根・外壁・室内)等

▶︎株式会社日進産業の塗布式断熱材製品概要

 株式会社日進産業は、セラミックビーズを中空にして水溶性に仕上げた「塗る断熱材」を独自開発し、塗布後自然乾燥を経て表面を隙間なくセラミックビーズで覆うことにより、0.4ミリから0.6ミリの塗厚で、発泡スチロール100ミリ相当の遮熱性能が得られる「シスタコート」を開発・販売してきました。

 
断熱塗料“ガイナ”一斗缶(左)と1ℓパック

 公的設備・鉄道・通信・倉庫・工場等の産業分野、一般建築分野、屋根・外壁・室内等のリフオーム迄、幅広く利用されています。

 従来の断熱工法は、空気層に断熱材を充填する方法を主流としていますが、現実は断熱というよりも保温に近く、対して日進産業の「塗る断熱材」は、熱線が物質に当って輻射熱となる前に反射してしまうことにより、効率的な断熱性能を発揮します。
地球温暖化の原因といわれる二酸化炭素。「GAINA」はその発生を抑えます。
「GAINA」を塗布することにより、熱侵入、漏熱が減少し、エアコンの稼働率が下がれば消費される電気エネルギーが減り、二酸化炭素の発生を減少させることができます。

 今回JAXAの「断熱材技術」を活用することにより、低温度帯域から高温度帯域迄(-100℃~+600℃)広域温度帯に対応できる「新・塗る断熱材」(新シリーズ:GAINA)の開発が可能となり、その一部については販売が開始されます。地球温暖化の防止を目指し、2008年から5年間で二酸化炭素の6%の削減を義務付ける京都議案書が発効されますが、本製品は、その二酸化炭素削減を加速する「新・断熱材」として貢献できます。