小学校、週1コマどう生み出す

■小学校、週1コマどう生み出す

▶︎掃除を朝に/10分の漢字学習新設 20年度から新要領で授業増

 2020年度から実施の新しい学習指導要領で授業時数が増えることで、全国の小学校が対応を迫られている。先行して取り組む小学校の、あの手この手の「時間捻出法」とは――。

 静岡県三島市に隣接する長泉町の町立南小学校内に午前8時10分、放送が流れた。「今から掃除です」。子どもたちは一斉にほうきで掃き始ログイン前の続きめた。

 次の指導要領は外国語の教科化に伴い、標準の授業時数が3~6年生で年35コマ(週約1コマ分、1コマは45分)ずつ増える新指導要領の外国語教育を今年から先行して実施する南小は、3~6年生で週1コマ増やし火曜を6時間にした。だが下校時間は早めたいと毎朝15分、読書や運動をしていた「南タイム」を削り、給食後の掃除を朝にした。子どもの放課後の時間だけでなく、教員の会議時間を確保する狙いもある。

 教員たちは昨年9月、3回の火曜に掃除をなくし、帰りの会を短くするなど変則の時間割にしてみた。すると、曜日でリズムが変わる時間割についていけない子が出た。「わかりやすく毎日安定した時間割にしなければ」と「南タイム」を思い切ってカットした。「南タイムは15年以上かけてつくりあげてきただけに残したかったが、やむをえない」と主幹教諭の小林浩之教諭。

 掃除を朝にしたため、「児童が帰った後、ごみが落ちている」という声もある。だが、「何が大事で何が要らないかを考え直す機会としてとらえたい」と渡邉晴彦校長は話す。

 一方、毎日10分の短時間学習を設けたのは、京都府の山あいにある宇治田原町立小学校2校だ。増やさねばならない1コマ(45分)分を月~金曜で5等分し1日9分。1分加えて10分とし、休み時間の見直しなどで捻出した。

 「午後のコマを増やすと子どもの気力や体力に響き、放課後の塾や習い事に影響が出る。夏休みに授業をすると、教室に冷房はあっても登下校時が大変だ」と田原小の森下廣二校長。「新しい時間割はどの曜日もどの学年も同じチャイムで動け、無理が少ない」と話す。副産物は、外国語教育のない低学年で1コマずつ減らせたことだ。

 確保した毎日10分間の授業は、国語の漢字指導の時間に充てた。英語も考えたが、教員たちがまだ慣れないだろうと断念。宙に一画ずつ書く「そら書き」、さらに指で紙に書く「指書き」で1コマに1、2字ずつ学ぶ。

 「集中して学べる」と6年の井本奏輝(そうき)さん(12)。同じ6年の堀口穂花(ほのか)さん(12)も「低学年にとって午後の授業はきついので、いいと思う」と言う。

 ただ、森下校長は話す。「これ以上授業時数を増やせと言われたら厳しい。タイトなうえにタイトになる。現場としては限界だ」

■「生活リズムへの影響、検討を」

 小学校の時間割は既に窮屈だ。現行の指導要領の標準の授業時数は、完全学校週五日制を導入した「ゆとり教育」の指導要領より、1~6年生の合計で278コマ増やしている。各校は学力向上策として朝学習などに力を入れてもいる。

 さらに授業をどう増やすのか。文科省の有識者会議は17年、選択肢として(1)夏休みや土曜日に授業する(2)週1コマ増やす(3)1回15分の授業を週3回や、30分、60分の授業を組み合わせる――などの案を挙げ、小学校に工夫を促した。

 カリキュラムづくりに詳しい大阪教育大大学院の田村知子教授(教育経営学)は「各学校は実情に応じ、児童の生活リズムや特別支援の子への配慮、放課後や土曜日の過ごし方への影響などを検討しなければならない」とし、「当たり前と思っていた時間割を問い直す必要がある」と話す。(編集委員・氏岡真弓)