土浦・成年後見制度講演会
■自分らしく生きるための 成年後見制度
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート.茨城支部 司法書士 安 藤 康 子
▶︎はじめに、司法書士の主な業務
① 不動産及び会社の登記手続きの代理
② 裁判所に提出する書類の作成
③ 家庭裁判所から選任される成年後見人、不在者・相続財産管理人などの業務
④ 法務大臣の認定を受けた司法書士にっいては、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟等の代理及びこれらに関する相談
▶︎成年後見制度
成年後見制度は、判断能力が不十分なために、財産被害を受けたり、人間としての尊厳が損なわれたりすることがないように,法律面や生活面で支援する身近な仕組みです。
■録音-1(22分)
▶︎任意後見とは
今は元気だが、将来、判断能力が不十分になった時に備えておくための制度です。支援を受けるご本人が、この制度の内容や支援の内容をよく分かっている必要があります。まずは、気軽に見守り契約から始めませんか?
判断能力が確かなときに司法書士など(家族でもOK)があなたと話し合いの上、支援内容・方法を公証人が作成する公正証書で契約します。そして、支援の必要が生じた場合には、契約した司法書士などが後見人として支援します。後見人が正しく職務を行っているかチェックするために必ず監督人が家庭裁判所で選任されます。後見人の報酬は契約で決めておきます。
▶︎任意後見契約
自分がしっかりしている間に、あらかじめ財産管理なという契約してもらえる人を選んで頼んでおく任意代理契約判断能力がしっかりしていても、病気等で身体を思うように動かすことができない場合に、自分に代わって・自分の財産を管理したり、必要な契約締結をしてもらおうという契約
▶︎任意後見の3つの類型
① 即行型 任意後見契約と同時に任意後見監督人選任申立てをする
② 移行型 任意後見契約と任意代理契約を結ぶ
③将来型 任意後見契約だけ結ぶ
▶︎見守り契約
・具体的な支援はしないが、ときどき連絡をとり、本人を見守りながら信頼関係を継続させるための契約
・適切な時期に任意後見監督人選在申立ての手続き等をするタイミシグを計る。
■法廷後見制度3種類
判断能力が減退したときに、あなたやあなたの家族が家庭裁判所に手続きをすると、家庭裁判所が選任した司法事士などが後見人になり支援します。後見人はあなたの意思を尊重し、福祉や生活に配慮しながらあなたに代わって契約をしたり、あなたのした契約を取り消します。後見人の報酬(無報酬の場合あり)は家庭裁判所が決定します。
▶︎成年後見制度はどのようなときに利用しているか
① 認知症の父の不動産を売却して入院費にあてたい。
② 寝たきりの父の代わりに銀行預金をおろそうと思ったが、銀行員から本人以外は手続きができないと言われた。
③ 父が死亡し、相続申手練をする必要があるがこ母が認知症で、遺産分割の話し合いができない。
④ 母は、障がい者施設に入所する必要があるが、本人では契約できない。
⑤ 両親が死亡した後、知的障がいをもつ子どもの将来が心配。
⑥ 一人暮らしの老人を安心して過ごしたい。将来高齢者施設などに入所するための契約をしたり、入所の費用を払ってもらいたい。
■成年後見制度の申立方法(法定後見の場合)
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/20170324koukengaikyou_h28.pdf
②医療機関ゐ診断書を入手する
③家庭裁判所に申立書等を提出する。申立ての際に、後見人候補者を提示することもできる。
○申立てができる人
・本人、配偶者、四親等内の親族など
・身寄りのない人の場合は市町村長
④家庭裁判所の調査を経て、後見開始の審判がなされ成年後見人が選任される。
▶︎誰が成年後見人に選任されるか
① 現状では、本人の親族や司法書士、弁護士、社会福祉士などの専門職が選任さ れることが多い。
② 一人の成年被後見人に対し、複数の成年後見人が選任されることもある(親族後見人と専門職後見人を一人ずつ選任するという形が多い)。
③ 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、成年後見監督人を選任することもできる。成年後見監督人は、成年後見人の監督および支援をするという役割を担う。
④ 次の者は成年後見人になることができない。
1 未成年者
2 家庭裁判所で免ぜられた津定代理人、保佐人または補助人
3 破産者
4 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
5 行方の知れない者
■成年後見活動のイメージ図(法定後見の場合)
■録音-2(18分)
▶︎成年後見人の職務
①財産管理
預貯金の管理・払戻し
年金その他の収入の受領・管理
不動産などの重要な財産の処分
遺産分割、相続の承認・放棄
その他
②身上監護
介護・生活維持に関する事務
住居の確保に関する事務
施設の入退所、異議申立てなどに関する事務
医療に関する事務
教育・リハビリに関する事務
その他
③一方で、食事の世話や実際の介護などのような事実行為は、基本的は、後見人の職務ではない。又、医療行為の同意権や死後の事務は職務ではない。
■後見申立のメリット・デメリット
▶︎メリット
・本人にとっては、判断能力の低下によって不利益を受けないように契約を締結したり取り消したりしてもらえる。
・一部の親族や他人からの財産の流出を防げる。
▶︎デメリット
・申立の原因が解決しても、本人が亡くなるまで後見業務は終了しない。
・主な法律行為には裁判所の許可や同意が必要となるので、申立人の思うような不動産の売買などができるとは限らない。
・後見人候補者を記載しても、専門職後見人が選任されたり、後見監督人が選任されることがある。その場合、報酬が発生する(ただし、本人の財産かち支払う)。
・相続税対策や財産の積極的運用はできない(「家族信託」の検討)。
・会社の役員や一定の資格職はできなくなる。
■録音-3(18分)
■不正行為を防止するために
▶︎家庭裁判所の取り組み
・専門職後見人や後見監督人を積極的に利用
・後見制度支援信託の積極的利用
▶︎司法書士会の取り組み
○安心してご利用していただくための4つのしくみ
・「リーガルサポート』は公益の認定を受けた全国組織の公益社団法人です。
・「リーガルサポート』に登録した司法書士を指導・監督しています。
・『リーガルサポート』に登録した司法書士に対して研修等を行い.資質の向上に努めています。
・『リーガルサポート』に登録した司法書士の中で所定の研修を終了した者を家庭裁判所に後見人として推薦しています。
茨城県内では97名の司法書士が全員登録しています(平成28年6月現在)。
■成年後見制度の今後の見通し
① 認知症高齢者数、約439万人
・MSIの人(正常と認知症の中間の人)380万人(厚生労働省推計 平成22年)
・知的障がい者 約54万7000人
・精神障がい者 約320万人(内閣府 平成25年度版障害者白書)
② 成年後見人候補者の不足
■市民後見について
(1)親族後見人・専門職後見人に続く「第三の後見人」の登場
・市民後見人とは、「弁護士、司法書士、社会福祉士などの資格はもたないものの社会貢献への意欲や倫理観が高い一般市民であり、成年後見に関する一定の知識や技術・態度を身に付けた良質の第三者後見人等の候補者」(ただし、法律上、明確に定義されているわけではない)
(2)市民後見人の利点
・身上監護において、きめ細かい見守りができること。お互いが地域住民であることから、独特の連帯感、信頼感があること、地域福祉推進の一助となること
(3)一般のボランティアとの違い
・家庭裁判所によって選任されなければ、後見業務を始めることができない。いったん後見人に就任すると、正当な理由がなければ辞任が許可されない。後見業務は、基本的に、本人が死亡するまで継続しなければならない。
(4)市民後見人に適した事案の例
・本人の財産が多額でなく、管理しやすい事案。身上監護に困難性がない事案(本人が施設に入所しているなど)。紛争性のない事案
■適任の親族後見人候補者がいない事案
(5)市民後見人の育成及び活用
■録音-4(16分) ▶︎参加者の質問より
■おわりに
全ての人が安心して暮らせるように成年。後見制度のさらなる普及を目指して
<出典>
・成年後見リーガルサポートセンター茨城支部HP
・厚生労働省HP
・最高裁判所事務総局家庭局成年掃後見関係事件の概況・・・平成28年年1月~12
・成年後見制度利用促進委員会 第1回不正防止WG、「家庭裁判所における不正防止策の環状と今後の在り方等について
■追加関連資料